2002年12月


「ザ・リング」- The Ring -

 ゴア・ヴァービンスキー監督、鈴木光司原作、リック・ベイカー特殊メイク、ナオミ・ワッツ、マーティン・ヘンダーソン、ブライアン・コックス、デヴィッド・ドーフマン、リンゼイ・フロスト、アンバー・タンブリン、レイチェル・ベラ、デイヴィー・チェイス、シャノン・コクラン、リチャード・ラインバック。

 シアルト郊外、一人の少女ケイティが謎の死を遂げる。その叔母であるシアトル・ポスト記者のレイチェル(ナオミ・ワッツ)は、事件の調査をはじめ同じ時刻に彼女を含む4人の謎の死を知り、やがて死の 7日前に4人が泊まった山小屋で呪いのビデオテープを見つける…。

 映像の作り方、展開を含めかなり中田版「リング」に近いが、それでも怖さの質がかなり違う。「ザ・リング」は突然、あるいは一瞬見せる怖さがいかにも怖がらせてやろうという印象。中田版「リング」はぼんやりと見せたり、見えそうで見ない映像が怖くて後を引く。怖さでは中田版「リング」の方が上だと思う。
 ハシゴ、馬などオリジナルな所は上手い。もっと元を気にせずに作った方が面白くなったと思うが。同じモノを作ってもしょうがない。

「The Ring」Official Website
「ザ・リング」Official Website


「ショウタイム」- Show Time -

 トム・デイ監督、ロバート・デニーロ、エディー・マーフィー、レネ・ルッソ、フランキー.R.フェイズン、ウィリアム・シャトナー、ドレナ・デニーロ。

 俳優の夢を持つパトロール警官トレイ・セラーズ(エディ・マーフィー)、ベテラン刑事ミッチ・プレストン(ロバート・デニーロ)は麻薬事件のディーラーを取り逃がす失敗から、コンビを組まされ密着取材番組"ショウタイム"に出演する事になる。TVプロヂューサーのネレ・ルッソ(チェイス・レンジー)の手腕でこれが大人気になり二人は人気者に。そして、特殊重火器で武装する麻薬マフィアのボス、ヴァーガス(ペドロ・ダミアン)と対決する事に…。

 おおむね楽しめる。デニーロの渋さと役柄が妙に一致していて、そこのエディー・マーフィーが絡んで上手く笑いがとれている。逆にアクションは派手な割には、細部はいい加減。ラストの水責めも派手ではあるが、工夫が感じられない。
「スタートレック」のカーク船長が本人役でTV監督を演じ“(TV的な)刑事らしさ”を教えるシーンは秀逸。

「ショウタイム」Official Website


「TRICK 劇場版」

 堤幸彦監督、蒔田光治脚本、仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、野際陽子、伊武雅刀、竹中直人、石橋蓮司、山下真司、芳本美代子、ベンガル。

 自称天才売れっ子奇術師の山田(仲間由紀恵)と自称天才物理学者の上田(阿部寛)のコンビ、糸節村という寒村を襲う300年に一度の災い、その不安を取り除くために神を演じて欲しいと依頼を受ける…。

 各キャラの設定や、小ネタのギャグは確かに面白い。あくまでもTVドラマの劇場版と割り切っていれば楽しめる。でも、劇場版ではもうちょっと何かが欲しいと思うがなあ。少女を取って見ても、最期はあれでいいのか…。
 TVと違ってCM中に考える事が出来ないのが難点だが、それぞれのトリックは意外に簡単。

「TRICK 劇場版」Official Websie


「なごり雪」

 大林宣彦監督、伊勢正三原案(?)、三浦友和、細山田隆人、ベンガル、反田孝幸、須藤温子、宝生舞、日高真弓、田中幸太朗、斎藤梨沙、津島恵子、左時枝。

 一人、東京で五十歳を迎えようとする梶村祐作(三浦友和)の元に、28年ぶりに故郷の友人水田健一郎(ベンガル)からの電話、妻の雪子が死にかけているとの連絡。祐作は大分県臼杵(うすき)市へ向い、健一郎と共に過去を見つめ直していく…。

 現在と過去との平行した展開は上手いし、少年時代のセリフ回しのヘンさを除けば、大林宣彦のノスタルジックな語り方も成功している。自殺未遂事件(?)の謎での引っ張り方もある程度成功しているが、ちょっとテンポの悪さはある。

 「なごり雪」は確かに伊勢正三の名曲ではあるが、どうしてもイルカの方を連想してしまう。今の伊勢正三の声では若々しさがないし。映画の中で何度、イルカの声だったら良かったのにと思った事か。また、セリフの中で歌詞から持って来た言葉を多くも使っているが、どれも違和感が強く無理やりな感じがした。最期に残る違和感は、やはり「なごり雪」は東京から旅立つ歌なんじゃないかって事か。

「なごり雪」Official Website


「スズメバチ」- Nid De Gue'pes/The Nest -

 フローレン=エミリオ・シリ監督、ナディア・ファレス、ブノワ・マジメル、サミー・ナセリ、パスカル・グレゴリー、サミ・ブワジラ、アニシア・ユゼイマン、アニシア・ユゼイマン、リシャール・サムエル。

 フランス北東部ストラスブール、7月14日のパリ祭。アルバニア・マフィアの最高幹部アベディン(アンジェロ・インファンティ)の護送任務中の特殊警察エレーヌ・ラボリ(ナディア・ファレス)、ヴィンフリード(リシャール・サムエル)らの装甲車は、アベディン救出部隊の奇襲攻撃を受け倉庫へ逃げ込む。そこはサンティノ(ブノワ・マジメル)、ナセール(サミー・ナセリ)らが窃盗に入った倉庫。重火器に一斉砲火を受け、特殊警官、窃盗犯、警備員ら一緒になり倉庫に包囲される…。

 包囲された仲間割れ確実の人間たち、それも戦闘経験も無い人間たちが多数、この設定が何しろ上手い。さらに激しいガンアクションでありながら美意識を忘れない画面構成、とかなり面白いのだけどラストに向かってはかなりいい加減。生死も判らない登場人物が多数でちょっと可哀想。 クールな狙撃手、鉄仮面ヴィンフリードなんかすごくかっこいいのに、最後の方の扱いはひどい。
 ラストまできめ細かい作りだったら傑作、残念。

「スズメバチ」 Official Website


「9デイズ」- 9 Days -

 ジョエル・シュマッチャー監督、ジェリー・ブラッカイマー製作、アンソニー・ホプキンス クリス・ロック ガブリエル・マクト ピーター・ストーメア。

 闇市場に流出した旧ソ連の小型核爆弾、その回収中のために殺された捜査官に代わり、CIAは双子の兄弟ジェイク(クリス・ロック)を代役に仕立て上げる。ジェイクはベテラン捜査官オークス(アンソニー・ホプキンス)とともに取引のためにプラハに向かう…。

 予告編からもチャチさが見えるし、ブラッカイマー製作ならその薄っぺらさは間違い無し。実は機内上映で、ラストの方をちょっと見ているので期待度ゼロだったが、やっぱりイマイチ。どっかで見たような話をつなげて、ラストも適度に盛り上げてオシマイ。でも、ラストのチャチさはかなり酷いと思う、何の工夫も無いあんなラストを堂々と見せてしまうのは逆に驚き。

「9デイズ」 Official Website


「セレンディピティ」- Serendipity -

 ピーター・チェルソム監督、ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセール、ジャーミー・ピヴェン 。

 クリスマス直前のニューヨーク、プレゼント購入のためにごった返す店内、同じカシミアの手袋を掴んだ事でジョナサン(ジョン・キューザック)とサラ(ケイト・ベッキンセール)は出会う。引かれ合いながら、お互い恋人がいる身、サラは運命に身を任せる事に…。

 「ユー・ガット・メール」「めぐり逢えたら」等のラブロマンスもんだけど、さらに過激な運命的出会い。古本、5ドル札等の小道具の使い方は面白いのだけど、ちょっとしつこいか。ここまで運命、偶然だらけでいいものなのか。コピーは"運命の人なら、きっとまた逢える"…、この映画を観て人生を誤らない人が出ない事を祈る。
 前半はある程度良かったが、ラストはまったくセンスに欠け凡庸、面白く無い。
 Serendipityは、予期せぬ良い物、掘り出し上手という意味。ニューヨークに実在するカフェの名前でもある。

「セレンディピティ」Official Website


「プロフェシー」-The Mothman Prophecies -

 マーク・ペリントン監督、リチャード・ギア、ローラ・リネイ、ウィル・パットン、ルシンダ・ジェニー、デブラ・メッシング、アラン・ベイツ。

 ワシントン・ポストの記者ジョン・クライン(リチャード・ギア)と妻のメアリー、新居の物件を見た帰り交通事故でメアリーが負傷、"あれを見た?"というメアリーの死の直前の謎の言葉、何かにおびえ、残された不気味なスケッチ。ある日、ジョンは迷い混んだ街ウェスト・バージニア州ポイントプレザントで起る不思議な現象を知り、「モスマン(Mothman)=蛾男」の存在を知る…。

 基本的にはホラーではあるが、作為的に怖がらせる事も無く、淡々とエピソードを積み重ねていく。徐々に深まる観客の不安感の作り方はなかなか上手い。最後の事件までは派手さは無いが、悪いテンポでは無いと思う。モスマンの存在も、キリスト教臭さが入って無いのが上手く、原始的な恐怖感を駆り立ててくれる。
 リチャード・ギアらしく、最後にラブロマンスの香を入れているのは余計な気もするが(と言うかリチャード・ギアだからイヤらしく感じる)モスマンの事はまるで知らなかったが、UMA(未確認生物)マニアでは有名らしい。

モスマン : 月刊「ムー」未確認動物
A Motheman Retrospective : www.blather.net
 
都市伝説っぽいモスマンの話を知ると、なんか映画が薄っぺらく見えてくるので、知らない方が楽しめるかも。かなり面白かったが、これがモスマンじゃなければ評価はかなり高くなるのに。

「プロフェシー」Official Website


「恋にうたえば」

 金子修介監督、優香、竹中直人、玉山鉄二 、篠原ともえ、梅宮万沙子、田口浩正、石田太郎、古田新太 。
 恋人サトル(玉山鉄二)から突然別れを切り出される桜井ユミ(優香)は、ショックで仕事も失敗続き。大アラビア展の催事場で、"願いごとをかなえる壺"の中から出てきた壼男(竹中直人)に会う。サトルを取り戻すため、ユミと壺男はオーストラリアのブリスベンへ向かう…。

 どこから見ても面白く無さそうな映画ではあったが金子修介監督という所に期待をかけてみたが…まったくと言っていい程面白く無い。ひたすら退屈な時間。ミュージカルシーンは冗長で、派手さが中途半端。インド映画、「踊るマラハジャ」みたいに突き抜けた所が欲しい。竹中直人もメリハリが無くイマイチ、優香は良い所まったく無し。

「恋にうたえば」Official Website


Movie Top


to Top Page