レトロの香り

レトロと言えばセピア…やや短絡的な手法があるが便利である
しかし、実際にセピア写真について深く考える機会は少ない


セピアとは

(1)イカ・タコの墨を乾かし,アルカリ液に溶かし,希塩酸で沈殿させて作る,黒茶色の絵の具。水彩画・ペン画素描に用いる。
(2)黒茶色。 …大辞林より


調色とは

 調色とは銀塩写真の世界では、「漂白と染色のプロセスで黒化金属銀画像を調色画像に変換する」と言う意味である。世の中で目にするセピアの写真は、レトロ調に調色した銀塩写真である事がほとんどだったが、現在ではデジタル画像処理したものが多い。

 Photosohpにおいて、セピアにするのは定番の操作であり、実に簡単である。「イメージ/色調補正/色相・彩度」色彩の統一をチェック、色相(0〜360)30〜40、彩度50程度にする。
 この時、色相が30に近い方が赤っぽく、40に近い方が黄色っぽい。これは下の例の様に微妙な差である。


色相=30(左) 色相=40(右)

 実際の色あせによるレトロ調はやや黄色い方が近い。しかし、世間でよく見るレトロ調のセピアは後に述べる銅による調色のものが多かったために、セピアというとやや赤みかかった色相30付近のイメージを持つ人が多い。
 私の個人的好みでは、本当のレトロ調を出すなら色相40あたりにする方がより古臭さを出せていいと思う。彩度も50よりは下げた方がホンモノっぽい。


ビネット

 セピアとともにレトロ調にする定番処理としては、ノイズを加える、ビネットを施す事が挙げられる。さらに女性の写真は、ソフトフォーカス処理(Digital Camera Maniaの「デジタル・カメラで撮るポートレート」を参照)をするとよい。


ややソフトフォーカスにした後、色相40、彩度50でセピアに
「フィルター/ノイズ/ノイズを加える」でガウス分布、12のノイズを加える
さらに選択ツールを楕円にして輪郭を取り、
「選択範囲/境界をぼかす」で周囲をぼかし切り取る

 ビネット(Vignette)とは、本来的には写真の縁をぼかして写真の地に溶け込ませたものである。これが縁取りのはっきりしたものや、縁を黒くぼかしたものまで拡大解釈される事がある。
 銀塩写真では、プリントの際に望みの形に切り抜いた型紙を、印画紙より浮かせて露光する事によりビネットを作る。逆に周辺を黒くしたい時は適性露光後に型紙で必要な部分を覆い周辺だけを露光する。
 型紙の形により色々な形のビネットを作る事が出来る。
 Photoshopにおけるビネットの基本原理は、暗室での作業と同じである。望みの形に選択し(型紙の形)、「選択範囲/境界をぼかす」でぼかす範囲を決める(型紙と印画紙の高さ)。「選択範囲/選択範囲」の反転を行い、周辺を白など好みで塗りつぶせばよい。


参考-調色液について

 参考のために、銀塩写真で使われる調色液の配合をまとめておく。
 下の硫化調色は、退色によるレトロ調に近いと思うが、漂白、調色の2プロセスが必要であり、また硫化カリウムによる刺激臭が強いために、市販のセピア調色液は銅調色のものが多い。これが一般的にセピア写真によるレトロな写真がやや赤みがかったイメージを作っている原因だと想像している。

1) 硫化調色 (セピア-温かみのある茶)
漂白液
  臭化カリウム 50g
  フェリシアン化カリウム(赤血塩) 100g
  水を加えて100ml
  使用時に水9:溶液1で使用液
硫化調色液
  硫化ナトリウム 200g
  水を加えて1000ml
  使用時に水6:溶液1で使用液
* 硫化ナトリウムの刺激臭がある

2) 銅調色 (温かみのある茶〜赤)
漂白液
  フェリシアン化カリウム(赤血塩) 6g
  クエン酸カリウム28g
  水を加えて100ml
硫酸銅調色液
  クエン酸カリウム 28g
  硫酸銅7g
  水を加えて1000ml
等量混合して使用液にする


着色

 調色とは異なるが、30年以上前によく行われたのが着色である。一般的には無光沢の印画紙に明るめにプリントを作り、さらに白黒では着色しにくいので、セピアに調色してから着色を施した。写真着色用の絵の具もあったが、ウォーターカラーインクで、薄く色を重ねていけば代用出来る。

 これをPhotoshopで行うには、「イメージ/色調補正/色相・彩度」で色彩の統一、色相40,彩度40,明度+10で明るめにセピアの画像を作り、これにブラシツールで透明度5〜10%程度で色を重ねていけばよい。重ね塗りで色を濃くするように描く。


調色の組写真

 カラー写真が普及する前は、各種の調色をほどこした組写真もあった。最近になって、いくつかの広告でセピア、白黒、青の3枚の組写真を使ったものを見たが、これなど先にあげたセピアと青の調色をデジタルでまねたものであろう。


左 - 色相=-140、彩度40
中 - 彩度0
中- 色相=40,彩度40
対比として同じ画像で作ってみたけど、なんかヘン(^^;)


オリジナル調色

 落ち着いた雰囲気の広告やカット写真などに、デジタル処理によるモノトーンが使われる場合は多い。この時、微妙に単一色をかけて変化を出すとよい。
 最近でいうと、MACWORLD Expo Tokyo '97のポスターなどに使われていた目をつぶった少女の写真がよかった。計測機で計ってみたら、大体、色相が60あたりの絵になっていた。


元画像にソフトフォーカス処理を行った後、
「色相・彩度」で色彩の統一、色相60、彩度20にしたもの
MACWORLD EXPO Tokyo '97のポスターに近いイメージ

 大抵、彩度を20〜30程度に下げてから、色相を選んだ方がイメージが合いやすい。彩度が高いと派手すぎて、落ち着いたイメージがつかめないからである。


セピア・フィルター

 セピアにするには暗室処理の調色だけではなく、撮影時に効果を与える方法もある。カメラ向けのフィルタの中の、セピア・フィルタと言われているものである。各社、色あいや濃さによってバリエーションがある。ケンコーで言えば、レトロセピア・フィルターと、それよりも赤みを抑え濃度が薄めのユーロセピア・フィルターというのがある。
 この様なフィルタはある程度の色を残すので、Photoshopで真似るなら、調整レイヤーで「色相・彩度」を選び、色相40,彩度40にする。効果の度合いは、不透明度で調整すればよい。


元画像にソフトフォーカス処理を行った後、
調整レイヤーを「色相・彩度」で色彩の統一、色相40、彩度50にし不透明度50%

 調整レイヤーが無い、Photoshop3.0などでは、一つのレイヤーをセピア色に塗り潰し、描画モードを「色相・彩度」にし、やはり効果の度合いは、不透明度で調整する。


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